今回は、日本酒ができるまでの流れを簡単に学んで行こうと思います。
僕たちが普段手にする日本酒って、一体どのような工程があって誕生するのか気になりますよね。決して楽ではない日本酒造りの工程の流れを覚えて、その背景を知って日本酒を楽しみましょう!また一段と、日本酒が美味しくなりますよ!それではやっていこう!
◆日本酒造りの流れ(製造工程)
①精米
原料米の表面を削っていく「精米」という工程。米の表面にはタンパク質や脂質などの成分が多く存在します。このタンパク質や脂質などが、日本酒の苦味や雑味の要因になるといわれています。その成分が多い表面を削り、精米歩合を小さくするのです。
精米歩合が小さいほど、華やかな香りを持ったスッキリした日本酒になります。しかし、雑味は決して悪いものとは言えないので、どんな日本酒を造りたいかで精米歩合が決まります。
②洗米、浸漬(しんせき)
「洗米」という工程に入り、精米した米の表面に残っている糠(ぬか)などの不純物を洗い流します。この作業でしっかりと不純物を洗い流さないと美味しい日本酒になりません。
洗米の後は、必要な水分を米に吸収させるために水に浸す「浸漬(しんせき)」とう工程に入ります。
※精米によって熱を帯びた米の温度を下げて、水分の含有率を整えるために冷暗所で約2週間〜約3週間保管する作業が行われます。それが「枯らし」という作業で、精米と洗米の間にします。
③蒸し・放冷
浸漬(しんせき)を行って水分を含ませた米を、甑(こしき)と呼ばれる大きなせいろ、蒸米機などで米を蒸していきます。炊くのではなく、蒸していくことで、米の水分量を調整して、殺菌を行います。
蒸した米は、麹造り用、掛米用など、造る日本酒に応じて温度を冷ましていく「放冷」の工程に入ります。
④製麹(せいぎく)
「麹(こうじ)造り」と呼ばれ、蒸した米に麹菌を繁殖させる工程に入ります。「麹室(こうじむろ)」という温度や湿気などを管理できる専用の部屋で、麹菌を米に付着させていきます。この工程で、良質な麹を造ることを目指していきます。この工程は、日本酒の質も変わってしまうほど重要な作業となります。
⑤酒母造り
「酒母」とは、アルコール発酵に必要な酵母を大量に増殖させたものをいいます。麹と水を混ぜ合わせ、酵母と乳酸菌、そして蒸米を加えて約2週間〜約1ヶ月間で酒母ができます。
※酒母には大きく2つの種類に分けることできます。自然の乳酸菌を育てて乳酸を得る酒母を「生酛(きもと)系酒母」。人工的に乳酸を添加し乳酸を得る酒母を「速醸(そくじょう)系酒母」といいます。
⑥醪(もろみ)造り・仕込み
酒母をタンクに投入し、麹、蒸米、水(仕込み水)を加えて「醪(もろみ)造り」を行います。麹、蒸米、水を加える時は、全部の量を投入するのではなく、一般的には数回に分けてゆっくりと発酵させていきます。3回に分ける場合を三段仕込みといい、4回に分ける場合は四段仕込みといいます。発酵期間は約1ヶ月間かけて、アルコール発酵を進めていきます。
⑦搾り
発酵期間が終わると、醪を搾って、日本酒と酒粕(さけかす)に分けていく「上槽(じょうそう)」という工程に入ります。
※搾りには種類があり、自動圧搾ろ過機で左右から圧搾する「ヤブタ式」。木などで作られた酒槽に醪を入れた酒袋を何層にも重ねて上から圧搾する「槽(ふね)搾り」。醪を入れた酒袋を吊るし、自然の重力で落ちる雫を集める「袋吊り(雫搾り、雫取り)」があります。
⑧ろ過・火入れ
搾りたての日本酒には、細かい米や酵母などの小さい固形物が残っているので、取り除く為に「ろ過」を行います。
ろ過の後に、加熱処理の「火入れ」という工程に入り、殺菌効果で日本酒の腐敗を防いでいきます。火入れとは直接火をかけるのではなく、約60℃〜約65℃のお湯で湯煎して加熱をしていきます。
⑨貯蔵・調合・割水
火入れを終え、日本酒を熟成させる為に「貯蔵」をします。貯蔵期間により、日本酒を熟成させ味わいに変化をつけていきます。
熟成した日本酒(原酒)を、それぞれの銘柄に合わせて醸造アルコールを添加するなどの「調合」や「割水」をしてブレンドしていきます。
⑩火入れ・瓶詰め
調合された日本酒を、もう1度火入れをして殺菌効果を促し、お酒の味を落ち着かせて安定させます。その後に、瓶やパックに詰めて、日本酒という商品の完成となります。
※日本酒を瓶に詰めて後には火入れを行う「瓶火入れ」などの手法もあります。
◆日本酒造りの工程で変わる味わい
基本的な日本酒の流れをご紹介しました。その工程の中で火入れや貯蔵のタイミングの有無で、さまざまな味わいの日本酒になっていきます。
●生酒
火入れをしない日本酒を「生酒」といいます。フレッシュな清涼感の味わいが特徴です。瓶の中で乳酸菌などが生きているので、抜栓してから日に日に味が変わっていきます。非常にデリケートな日本酒なので、冷蔵庫での保存は徹底しましょう。
●生詰め酒
1回目に火入れをして、2回目の火入れをしない日本酒を「生詰め酒」といいます。生酒のフレッシュな味わいに、酸味が落ちつき、口当りのまろやかな味わいが特徴です。冷蔵庫での保存をおすすめします。
●生貯蔵酒
1回目の火入れはせず、2回目の火入れをした日本酒を「生貯蔵酒」といいます。生酒のフレッシュな味わいに、ふくよかな旨味の味わいが特徴です。冷蔵庫での保存をおすすめします。
●新酒・しぼりたて
火入れをした後に、貯蔵(熟成)を十分にしていない日本酒を「新酒」「しぼりたて」といいます。しぼりたてをそのまま瓶詰めするので、角が立ちスッキリとキレのある味わいが特徴です。新酒は熟成の途中なので、まろやかな味わいを引き出したい場合は、冷蔵庫で熟成させることもできます。
◆まとめ
いかがでしょうか?日本酒ができるまでの流れを掴めたでしょうか?
日本酒ができるまでに複雑な工程を経て、約60日間(2ヶ月)という長い日にちをかけて、日本酒が誕生します。麹造りや醪造りで1度失敗してしまうと、全てが水の泡になってしまうので、生産者達は乳酸菌など、目に見えない生物と向き合い、寝ずの作業を行っている蔵元もあるのです。
一生懸命に造られた日本酒を両手に、美味しく今日も乾杯しましょう!